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366 名前:名無し三等兵[] 投稿日:2005/12/22(木) 16:24:03 ID:Mit6EJHQ
ある班長殿の話
彼は台湾出身で終戦の混乱期、帰郷するところもなく長い間の苦労の後、大阪
で立派に成功している。彼のことばをしばらく聞いていただきたい。
「日本の映画、テレビは軍隊の悪い所を大げさに取扱い、良い所は少しも取り
上げない。確かに悪い下士官、将校も居たが良い人も多勢いたのだから、たま
には良い方も取り上げてもらい度いものだ。」
少飛の試験に合格し、台湾を出発するとき、母が胃散の薬の罐に砂糖を入れてく
れて「日本では冬、雪が降るから雪と一緒に喰べると美味しいよ。」といって
荷物の中に忍ばせてくれた。入隊以来、私物の中に大事にしまって置いたとこ
ろ、私物検査で班長に見つかり、「貴様!砂糖をかくし持って居るとは何事だ」
と叱られ「実は母親が雪にまぜて・・・・・」と前記のお袋のいったことを班長に
話しをすると、班長は胃散の罐を没収して、下士官室に引上げてしまった。何か
月か過ぎた或る日「下士官室へ出頭せよ」との命令があった。
367 名前:名無し三等兵[sage] 投稿日:2005/12/22(木) 16:27:14 ID:???
当時、呼出しがある時は怒られる時が多く、何で叱られるのかとビクビクして
下士官室に入ったところ、班長が「窓から外を見ろ」といった。そういわれな
くても、今日は日本に来て初めて見る雪景色を班内より充分堪能して居たとこ
ろだった。窓より班長の前にもどると、「腹をこわすな」といって小さな罐を
机の上にポンと置いた。良く見ると見覚えのある胃散の罐だ。演習、学課等忙
しくもうすっかり忘れていたあの胃散の罐である。班長は私の言葉をおぼえて
居てくれて、雪の降る今日迄大事に保管して置いてくれたのである。
外に出て砂糖と雪を一緒に口にほおばった。たしかにうまい。二口目を口にし
たとき、お袋の事、班長の気持が頭の中に交錯し胸一杯になり涙がとめどもな
く流れてきた。
三十年前のことであるが彼は昨日のことのように目頭に涙をためて話してくれた。