209 名前:名無し三等兵[sage] 投稿日:2005/09/30(金) 20:42:29 ID:???
・・その時、舟艇の米兵が、坂本兵長の水筒を指さし、よこせと手まねで言いました。
炎天下に立っていたので水筒はさわると熱いほどになっています。
「どうせこの水も飲めまい、記念にほしいのならくれてやろう」
水筒を渡すと米兵は船内に姿を消し、しばらくすると戻ってきて、
さっきの水筒を返してくれました。さわってみると、冷たい、こおりつくような水が
いっぱいに入っています。おどろいた坂本兵長が感謝をこめた眼でだまって頭を下げると、
米兵はニコッと笑って船室に入って行きました。 きのうまでの敵だった、
米兵の何気ない好意に感激して、坂本兵長はその水をぐっと飲みました。
うまい水でした。雨水でない、本物の水でした。このことは、坂本兵長の、生涯忘れられないひとコマになりました。
そして島はどんどん遠ざかり、視界から消えていきました。
[4回]
PR