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290 名前:名無し三等兵[sage] 投稿日:2008/11/09(日) 20:31:14 ID:???
索敵飛行も回を重ねグラマンとも何回か渡り合っていた頃ですが、
その日は珍しく何事もなく「帰投するぞ」の声に念の為、双眼鏡で左下を見ると、
大型機が黒い煙を吐きながら南へ飛行しているのを発見。
相棒の曹長の肩を叩きながら伝えると、「よし」といって半転、敵機の後方約500mにつけ双眼鏡で確認すると…
つづきはwebで
ttp://ohanashi.okigunnji.com/backnumber/te12.htm
索敵飛行も回を重ねグラマンとも何回か渡り合っていた頃ですが、
その日は珍しく何事もなく「帰投するぞ」の声に念の為、双眼鏡で
左下を見ると、大型機が黒い煙を吐きながら南へ飛行しているのを発見。
相棒の曹長の肩を叩きながら伝えると、「よし」といって半転、敵機の後方約
500mにつけ双眼鏡で確認すると、驚いたことに垂直尾翼の真下の銃座が
欠落、尾翼もブラブラかろうじて垂直尾翼がついている状態でした。
「下に廻るからよく観察しろ」とやや高度を落とし下部の銃座を見ると、
大きな穴が空き、ロックが壊れたのでしょう爆弾倉は空いたままです。
「上に廻る」と高度をあげ、少し接近して上部の回転式銃座を観察すると、
こちらの機に気がついたのか銃座が回転して機銃が我が方に向きましたが、撃ってきません。
よくよく観ると、機銃手は放心状態で最早戦意はなく、じっとこちらを見ているだけです。
「前に廻る」と速度をあげ、敵機の左側上空にでて操縦席を見ると、
左側3分の1程度が欠落、副機長が懸命に操縦していますが、左の
エンジンは2基とも止まり、オイルが燃えて真っ黒な煙を吐いています。
被弾状況から判断すると、高射砲の至近弾で満身創痍となったのでしょう。
「撃たないのでありますか」との答えは「俺は手負いの鹿は撃たない、
よく見ておけこれが空の要塞といわれるB29だ」
ゾクゾクしました。
実物のB29を間近に見たことよりも、必死になって飛び続ける姿に感動しました。
無線機の周波を変え緊急信号(メ-デ-)をとらえようと検波しましたが、上手く同調しません。
「海面をよく見張っておれ、潜水艦が現れるだろう、敵機の僚機にも注意しろ」
眼を凝らして四方を見渡すと潜水艦らしき姿。潜望鏡深度で、
B29の後を追うように航行するのを発見しました。
「潜水艦は急浮上するぞ」との相棒の声。
まもなく急角度で潜水艦が浮上するのが見えました。
私達はB29の周囲を旋回しながら監視を続けていましたが、
ほどなく潜水艦のハッチが開き、水兵が高射機関銃のカバ-を
外してこちらを狙っており、命令を待っているようです。
艦橋のハッチが開き2.3人の将校らしき姿が現れ、双眼鏡でこちらの様子をうかがっています。
B29は海面すれすれに飛び着水を試みようとしていますが、
機体の破損状況から、水平に着水すれば、衝撃で操縦席は吹っ飛ぶでしょう。
機首をやや上にあげ尻餅を着くように着水するのがよいと一瞬想いましたが、
そうすれば、機体の破損は胴体の下部が酷いようなので、機体は衝撃で
真二つに折れるだろう、どちらを選ぶかと思っていたら力が尽きたのでしょうか、
水平に突っ込むように着水しました。
案の定、操縦席は吹っ飛び爆弾倉と機体の前部から海水が雪崩れ込み、
大きな機体はみるみる沈んで行きます。
操縦士は、我が身を捨てて生き残った者を助けようとしたのでしょう。
潜水艦から救命ボ-トが救助に向かっていましたが、上空から見ると
沈んでゆく機体に近づくのが遅く感じられ、我を忘れて「早く、早く」と念じました。
その時は戦争を忘れ、まるで映画を観ているようでしたが「潜水艦の銃を見張っておれ」との
声で我にかえりました。B29からは間一髪で何人かが救助され、やがてその大きな機体は
波間に消えました。
上空を旋回していると、潜水艦の艦橋で一人が挙手の敬礼をしているのが見え、
私も思わず敬礼をしました。
潜水艦の上空を飛び翼を僅かに振って飛び去りましたが、後ろを振り向くと
艦橋にまだ人影が見えましたが、その姿は、私の目には「ありがとう」と
言っているように映りました。
「今日は何かあったか」と聞かれ、言いたいことは分かりましたので、
ついつい冗談口がでて「本日は晴天なり」。
「こちら○○機、索敵異常なし、ただいまより帰投する ○○○○(時間)」と打電していると、
相棒の「やり切れんな」との独り言が聞こえました。
この「やり切れんな」の中に戦争の残酷さと空しさが込められているのを感じた次第です。