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軍事板「戦時中、戦場でのほのぼのとした話」スレまとめサイト
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667 名前:名無し三等兵[sage] 投稿日:2011/08/16(火) 00:25:47.60 ID:???
伊号潜水艦長の板倉光馬と言えば、軍板でも知らん奴は少ないだろう。
新任少尉時代に乗艦である重巡「最上」の艦長を泥酔してぶん殴り、
自分の見合いをブチ壊そうと泥酔したのに策におぼれて結婚することになり、
潜水艦長になってからも、オホーツクの港で泥酔して海に落ちて死にかけ、
と逸話の枚挙に暇がない名物男である。

さてそんな彼が航海長として一等駆逐艦「如月」に着任した時の事。
揚子江を遡航し攻略直後の南京にまで進出せよ、との命令が下った。

だがそこは板倉光馬、ただ川を遡ると言っても普通に済むわけがない。

揚子江の水路はすぐに変化するので海図は地名や距離を知る以外に役立たない、
水先案内人が必要だ、とのアドバイスを受けて探し出したのがただ一人の売れ残り。
こいつのとんでもない横柄で傲岸な態度(だから売れ残りなんだろう)にカチンと来て、
必要なのは判っちゃいるが、お前の態度が気に食わない、と大揉めに揉めた揚句にケンカ別れするわ
(艦長「艦橋で喧嘩ばかりされてはかなわん。気をつけてゆけばそのうち慣れるだろう」)

いざ遡航を始めれば、それ見た事かとばかりに海図に載ってない砂州に乗り上げ、危うく座礁転覆しかけるわ
(先任「これで、艦底のカキが落ちたでしょうなぁ・・・当分、入渠せんでもよかですたい」
艦長「うむ、速力も出るだろう。航海長、一戦速に落とせ。そう急ぐこともあるまい」)

当時まだ交戦状態にない英海軍の河川砲艦とすれ違う際には、
以前から英軍の妨害的な動きに腹を立てていた絡みで、先方が転覆しそうな勢いで艦尾波をひっ被せるわ
(しかも騙し討ちである・・・流石にこれにフォローは入らなかった。板倉もやらなきゃ良かったと後悔している)

そんなこんなの大騒動を繰り広げながら南京に到着すると、
現地司令部から付近住民の宣撫工作として塩の配布を行って欲しい、との依頼が寄せられた。
後甲板に塩カマスを積み上げて指定された河原に投錨すると、
かねて知らせを受けていたらしい村人たちがどこからともなく集まってきた。
戦乱の中で物流も止まり、塩も手に入らなかったと見え、持参の御椀に盛られた貴重な塩を大事そうに抱え、
如月の方に何度もお辞儀をしながら河原に生い茂る草むらの中に消えて行ったのであった。


668 名前:名無し三等兵[sage] 投稿日:2011/08/16(火) 00:28:52.18 ID:???
翌朝、河原には濃い川霧が漂い、真っ白な中にまったりとした空気が流れて行った・・・
と、突如!その川霧を引き裂かんばかりに鳴り響く鉦太鼓。
ジャーン!ジャーン!ジャーン!
「げぇっ!関羽!・・・じゃねぇ、敵襲!敵襲!配置に就けぇ!!(注」
霧は相変わらずあたりを覆う、敵の姿が見えるのは至近距離、そこで必殺の一撃を叩きこまねばならない。
張り詰めた緊張と殺気が充満する中、霧の向こうに蠢く人の姿が見え始めた。もうすぐだ。

そしてついに先頭切って霧の中から・・・ニコニコ顔の長老が!
後ろからはこれまた楽しげに、仔豚の丸焼きだのアヒルの卵だのの入ったカゴをかついだ村人たちの隊列が!
゚д゚)゚д゚)゚д゚)ポカーン…
如月の乗員たちが呆気に取られるなか、揚子江どころか三途の川を渡りかけていたとは露知らない村人たちは
如月の近くまでやってくると長老が進み出た。

一番若手の士官として板倉が送り出されると、長老が恭しくお辞儀をして何やら話し始めた。
悲しいかな如月には中国語が判るものが一人もいないが、身振り手振りから察するに、
どうやら昨日塩をもらったお礼に、早速ごちそうを作って持ってきた、という事らしい。
はぁ、こりゃどうも、と板倉が応対していると今度は長老、傍らにいた小娘を板倉に押しつけようとする。
年のころは十二、三。この娘だけが精一杯に着飾ってめかしこんでいる。
悲しいかな如月には中国語が(中略)察するに・・・
え、えーと、察するに・・・この娘も、お礼に持ってけってかぁ!?(汗


669 名前:名無し三等兵[sage] 投稿日:2011/08/16(火) 00:29:55.59 ID:???
予想外の展開に慌てた板倉、助けを求めて艦橋を仰ぎ見れば、
既に状況を悟ったらしい艦長以下の士官連は
(・∀・)(・∀・)(・∀・)ニヤニヤ
・・・まさに高みの見物であるw
ハッと気付いて周りを見れば、兵たちも(・∀・)(・∀・)(・∀・)ニヤニヤ
前任の空母「加賀」では「鬼の甲板士官」と畏れられた板倉の慌てふためく様は、そうそう拝めるもんじゃないw

じ、冗談じゃない、これじゃ人身御供だ、そんなのぁ御免だ、とむりやり娘を長老の方へ押し返すと、
同じような「お礼」がやってこないように艦長の許可を得て残りの塩を全部はたき、
後腐れを断ったうえでとっとと引き上げる事にしたのであった。

だがこれで済むわけがない。なにしろ戦地とはいえ戦闘に出くわすことも無く上官たちも暇をこいてた訳で・・・
先任将校「航海長ッ、なんでもらわなかったと。あの姑娘、磨けば、上玉になったばってん、惜しかことしたね」
いつも生真面目な砲術長まで
「そうですなぁ、男装させて士官室の従兵がわりにしたら、航海長のガブ飲みも少しはおさまったでしょうに・・・」
等々、板倉航海長、次の目的地まで上官たちに散々おもちゃにされる羽目となったのであった。

その後、例によってまたもや酒で死にかけた板倉光馬、
砲術長の言うように姑娘を従兵代わりにしとけば良かったんじゃないの?
などと書いてて思わないでもないが、それはまた別の話。

(注:軍板住人ならご存知の通りだが中国軍は銅鑼や太鼓、チャルメラを突撃ラッパの代わりにしていた。
なお、関羽云々は当然ネタである。蛇足までに)

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